スピードコンジェニック法を用いてMESの原因遺伝子(EOS1)をBN(Brown Norway)ラットに置き換えたコンジェニックラットを作成した。この過程で得られた交配動物を用いEOS1遺伝子について、野生型(+/+)、ヘテロ型(mes/+)及びホモ型(mes/mes)のそれぞれのラットについて血液学的及び組織学的に検討した。その結果、末梢血中の好酸球数は1000以下でBNラットの背景データと変らず、明らかな好酸球増多が見られなかった。しかし、肝機能検査値(血清AST及びALT)がmes/mesで高値を示した。組織学的検査では、mes/mesの肝臓において好酸球性肉芽腫がみられ、この病態は血清AST及びALT値の上昇と明らかに関連するものと考えられた。また、今回mes/mesにおいて新たに心筋炎も確認できた。心筋炎はヒトの好酸球増多症でよく報告されており、今年度の研究において、好酸球増多の原因遺伝子(EOS1)を本来の背景遺伝子であるSDラットからBNラットに換えることにより、ヒト型の症状を発症させることが分った。MESラットで認められている腸間膜リンパ節の腫脹及び血管炎についてはいずれもmes/mesのみで認められ、mes/+及び+/+では変化はなかった。他方、mes/+の動物でも肺の好酸球浸潤及び炎症像が確認できた。これはMESラットで好酸球増多を発症させる原因遺伝子の中に、これまで確認されている状染色体性劣性遺伝子以外に、好酸球増多をサポートする優性遺伝子が存在している可能性を示唆する成績と考えられた。繁殖性については、雌mes/mesの殆どが不妊であったが、数%程度の出現率で繁殖可能な個体があることが分った。以上のことから、今後、ヒト型好酸球増多の原因遺伝子の確定及びその病態解析を進める予定である。
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