研究概要 |
目的-現在の移植医療における臓器不足を解消するために、人体への異種移植に応用できる医用ミニブタの開発が注目されている。クラウン系ミニブタは鹿児島大学で開発されたもので、南九州の風土に適合し量産可能なミニ豚である。この異種移植の安全性を高めるためには、クラウン系ミニブタに潜伏する内在性レトロウイルス(PERV)の人体への病原性を検討することが必要である。このため、クラウン系ミニブタの各臓器(リンパ球、腎臓、肝臓、膵臓、骨組織、心弁膜、皮膚など)におけるPERV DNAを特異的PCR系で検出し、そのDNA配列から病原性の有無を検索する。クローン化PERV DNAを遺伝子操作して弱毒化(または無毒化)する基礎研究をおこなう。 研究実績-PERV DNAを検出するEnv, Gag, Pol gene特異的PCR primerと、Env geneを高感度に検出するnested-PCR法特異的PCR primer系を開発した。ジャパン・ファームで維持されている鹿児島産クラウン系ミニブタの高分子DNAを末梢血リンパ球より抽出し、PCRでPREVゲノムの有無とPREVの亜型分析を行ったところ、クラウン系ミニブタにはPERV-A, B, Cのゲノムが存在することが明らかになった。同時に、クラウン系ミニブタにはSLA系統がホモのSLA-1およびSLA-2の純系の2系統あるが、いずれも系統においてもPERV-A, B, Cのゲノムが存在した。したがって、PERVの亜型存在様式はSLAの系統での差異は無かった。さらに、クラウン系のPERV-C Env領域の塩基配列の解析では、データバンクに登録されているPERV-Cの塩基配列と比較して、ほとんどmutationがないことから、In vivoでのPERV発現は少ないと思われる。現在、各臓器(リンパ球、腎臓、肝臓、膵臓、骨組織、皮膚、心弁膜など)からRNAを抽出し、PERVの遺伝子発現についてRT-PCR系で確認中である。
|