1 ヒト白血病幹細胞の効率良い移植法の開発を目指して、ヒト造血幹細胞(HSC)とヒト間葉系幹細胞(MSC)を免疫不全マウスに骨髄内直接移植法にて共移植した。その結果、ヒトストローマ細胞がマウス骨髄内に効率良く移植され、ヒトHSCの造血を支持する骨髄内環境(niche)を構築していることを明らかにした。さらに、ヒト造血環境が再構築されることによりヒトHSCの生着率も向上することを見いだし、その成果を発表した(論文発表済)。本法を応用して、ヒト白血病幹細胞の生着率の向上を検討中である。 2 申請者らは、レンチウイルスベクターが感染時に宿主ゲノム上のランダムな位置にその遺伝子を挿入する性質を利用して、ヒトHSCの生体内動態を幹細胞一個レベルで詳細に解析する手法を確立した(LAM-PCR法)。すなわち、幹細胞一個一個を識別してその分化や増殖といった生体内動態を追跡するシステムを確立し、ヒトHSC一個レベルでの多分化能と自己複製能を証明した(2005年第67回日本血液学会総会WS-11-2、論文投稿中)。また、このLAM-PCR法を利用して、体外増幅培養系におけるクローン解析を行なった結果、ヒトHSCクローンが約1.5倍に増幅していることを明らかにした(2005年第67回日本血液学会総会WS-23-5、論文発表済)。 以上のように、今年度研究計画の推進により、正常ヒトHSCにおける移植法、生体内動態解析法の確立がなされた。次年度以降は本法を白血病幹細胞の解析に応用し、ヒト白血病モデルマウスの作成およびその生体内における動態解析を行う予定である。
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