ミトコンドリア電子伝達系複合体IIのサブユニットであるシトクロームbに変異をもつマウスmev-1培養細胞(NIH3T3)を構築し、ミトコンドリアからの活性酸素発生量の増加、それにともなうアポトーシス(細胞死)や、ヌードマウスに移植すると腫瘍を形成するような形質転換が生じることを確認した。さらに、マウス細胞に導入した同じ変異遺伝子を持つトランスジェニックマウスを構築し、組織から活性酸素が過剰発生していることを確認した。しかし、このマウスは不妊であったため、この変異マウスを改変し、ミトコンドリアからの活性酸素の発生量や発生時期をテトラサイクリン(Tet)により生体外部から任意に制御可能(Tet-on/off)な条件付遺伝子組換えTet-mev-1マウスを作製した。 従来のTet-on/offシステムはoffの時点でも完全に転写を抑制することは不可能であった。今回、activator(Tet-on)に比べてrepressor(Tet-off)が強く発現する新しい制御システムを構築し(特許申請中)、この欠点を克服した。 1.mev-1マウス培養細胞 (1)アポトーシス誘導をシグナル伝達経路から調べたところ、ミトコンドリアを起因としたシグナル伝達経路の活性化によりアポトーシスが誘導されていることが明らかになった。このアポトーシス誘導は細胞増殖が抑制された老化細胞に対しては細胞生存数の減少を促進させ、酸化ストレスにより腫瘍化した細胞に対しては増殖抑制効果を示すことを明らかにした。これらの結果は、ミトコンドリアの酸化ストレスが早老現象および腫瘍増殖抑制に伴う良性腫瘍化に深く関与することを示唆した。 2.Tet-mev-1マウストランスジェニックマウス (1)現在、14系統、30匹を取得している。 (2)このうち1系統のマウスを解剖し、この外来遺伝子の発現を各器官・臓器で調べた。その結果、各組織では弱い発現が認められ、筋肉では認められないことが明らかになった。
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