研究概要 |
ミトコンドリアゲノムの変異はさまざまな病気の原因になると考えられており、50以上の変異が確認されている。その検査には制限酵素断片多型(RFLP)を用いることが多いが、その結果を数値化することは容易でない。蛍光相関分光法(FCS)はDNAの鎖長を評価できるので、断片化パターンの定量化に適している。本研究ではミトコンドリアDNA (mtDNA)の制限酵素処理断片の特異的な分布の定量化をめざした。mtDNAの全長PCR産物の自己相関関数の切片はHga I処理により1から0,27へ減少した。Hga Iより断片数が多いHae IIIで処理したサンプルでは、切片が0,1へさらに減少した。ベータグロビンも断片数の増加に伴い、自己相関関数の切片は減少した。ゲル電気泳動の結果はデータベースから期待される断片化パターンと一致した。mtDNAとベータグロビンの断片化パターンの違いを反映して、自己相関関数の切片は異なっていた。Hae IIIの認識部位は、疾病に関連したPolymorphic MtDNA Restriction SitesがヒトmtDNA genomeでいくつも知られている。酸化的ストレスによるmtDNA損傷を無傷の鋳型量の減少をPCR産物の量から評価する方法はすでに報告した。その方法では1塩基置換を検出することは検出困難であったが、本研究で提案した方法では検出できた。FCSを使ってmtDNAのRFLPを電気泳動なしに評価できることが示された。今回のデータは標準の数値とし捉えて、ここからずれれば、点変異の可能性を疑って詳細に検討すればよい。
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