研究概要 |
実験1. 水素イオンが移動し易いハイドロキシアパタイト(HAp)ではポーリング処理により分極状態を維持でき、その負電荷側で骨形成を促進することが報告されている。一方、β-リン酸三カルシウム(TCP)はポーリング処理できないことが知られている。本研究ではポーリング処理したHApとHAp/βTCP複合体の極性が破骨細胞と骨芽細胞、骨形成に及ぼす影響を検討した。 Wistar ratの頭蓋骨に骨孔を穿ち、ポーリング処理したHApとHAp/βTCP複合体を以下の如く移植した。1.負電荷面(N面)が骨膜下、正電荷面(P面)が硬膜上。2.N面が硬膜上、P面が骨膜下。3.未処理の試料(0面)。骨孔のみをコントロールとした。6,10週後に試料を周辺骨を含め採取し、組織学的観察と骨形態計測を行った。N, P両面(特にN面)で骨芽細胞の活動が賦活化され新生骨形成が促進されること、P面側では破骨細胞の活動が抑制されることが示された。これはN面側の電気的Ca^<2+>イオン吸着により骨形成が起こるだけでなく、ポーリング処理により生じた大きな表面荷電が両面で骨元性細胞の活動に直接、間接的に影響を及ぼし、骨形成促進と骨吸収抑制に作用する可能性を示唆している。 実験2. 連通性ハイドロキシアパタイト多孔体(CI-HAp)のポーリング処理が、骨元性細胞の活動と骨形成能に及ぼす影響を検討した。 円柱状Cl-HAp(直径6mm,長さ5mm)を側面がN面、底面がP面になるようポーリング処理し、日本白色家兎大腿骨遠位顆部に穿った骨孔に移植した(N=10)。対照として無処理のCl-HApを対側穎部に移植した(N=10)。術後3,6週で試料を採取し(各週N=5)組織学的評価を行った。未処理のCl-HApでは移植後6週から、ポーリング処理すると術後3週で中央部骨孔内に骨が形成された。骨形成量はいずれの領域でもポーリング処理群が無処理群より有意に大きかった。ポーリング処理による骨形成促進はイオンやタンパクの静電気的吸引、骨芽細胞活性化、P面側領域では破骨細胞形成抑制効果によると考えられた。
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