研究概要 |
予荷重時間の増大が関節の摩擦係数の上昇を起こすことが報告されている.しかし,そうした潤滑機能の変化が何によって起きるかはもとより,正常関節の潤滑機構そのものについても,古くから多くの研究が重ねられているにも関わらず明確な結論は得られていない.本研究では,摩擦の増大が接触圧力分布の変化と関連すると考え,ロボットアームを組み込んだ摩擦測定装置を用い,摩擦係数を測ることにより,荷重時間が起動摩擦に及ぼす影響について検討した.それと同時に,接触圧力分布を調べることにより,予荷重時間による摩擦と接触圧力の関係を検討した. 実験装置を,ロボットアーム,力センサ,タクタイルセンサ,コンピュータによって構築した.実験試料は日本白色ウサギの雄,10週齢の膝関節を用いた.荷重センサ側に脛骨,ロボットアーム側に大腿骨を,骨セメントにより固定し,力の検出による摩擦測定系を構築した.あらかじめ予備実験で摩擦面を探索しておき,その後,摩擦測定動作に入った.測定の際に5分の静止荷重時間を設けた.静止荷重は,測定の際の荷重と同様,10Nになるように保った.設定静止荷重時間後,大腿骨を水平方向に滑らせた.滑り動作開始直前から鉛直方向の荷重と水平方向の摩擦抵抗力を測定し,滑り動作終了後コンピュータで計算することで摩擦係数を算出した.摩擦速度0.5mm/s,摩擦距離1.5mmとした.この測定を各試料各静止荷重時間において5回ずつ行い,平均を取った.静止荷重0sにおける関節の摩擦係数(平均値±標準偏差)は0.017±0.003,静止荷重150sにおける関節の摩擦係数は0.127±0.113,静止荷重300sにおける関節の摩擦係数は0.217±0.194,静止荷重600sにおける関節の摩擦係数は0.344±0.228であった.静止荷重0sにおける接触領域は42.2mm^2,静止荷重150sにおける接触領域は52mm^2,静止荷重300sにおける接触領域は62.6mm^2,静止荷重600sにおける接触領域は74.4mm^2であった.荷重時間後,摩擦時の接触圧力は集中する傾向がみられた.
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