研究概要 |
RGDS配列を足場に用いることで細胞との親和性を向上させることが期待でき,人工細胞外マトリックス(再生医工学用足場)を設計することが可能と考えられる. 今研究では,細胞接着性をもつRGDS配列と塩存在下でβ-シート構造を形成し自己組織化するペプチドを組み合わせ,3次元化可能な材料の創成を試みた.自己組織化可能なペプチドを分子設計し,再生医工学用足場となる自己組織化ペプチド集合体の構築を目的とした. これらペプチドの合成は,Boc-アミノ酸を用いた液相法とFmoc固相合成法を組み合わせて行った.生成物の同定と確認はMALDI- TOF-MSおよびアミノ酸分析にて行った.円二色性(CD)で各ペプチドの構造解析を,水晶発振子マイクロバランス(QCM)を用いて自己組織化ペプチド間の相互作用を確認した.また,マウス由来繊維芽細胞L929細胞を用いて,細胞の接着数,伸展率の観点からこれらペプチドに対する細胞の接着活性を評価した.加えてペプチド溶液を濃縮・放置をすることにより自己組織化ペプチド集合体を作製し,SEMにより観察を行った. CDを用いた自己組織化ペプチドの2次構造解析の結果,分子設計したペプチドは,目的通りβ-シート構造を構築することが明らかになった. さらに,QCM測定の結果,設計したペプチド間の相互作用が濃度に依存して大きくなり,自己組織化することで安定化することが確認できた.また,細胞接着実験の結果よりRGDS含有ペプチドはいずれの場合においても細胞接着が観察できた.なかでも,β-シート構造は細胞の伸展率が他のペプチドに比べて優位であった.このことからRGDSが材料表面に突き出し,インテグリンレセプターと容易に相互作用することができると推測される.これらのペプチドからFiber状の3次元構造体を構築することに成功した.これら構造体は,1センチ位の塊状物として得ることができる.以上の結果より,今回分子設計したオリゴペプチドは人工細胞外マトリックスや再生医工学材料としての可能性も考えられる.
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