12週オスのラットを用い、ネンブタール麻酔後、逆行性に冠動脈経由にてコラゲナーゼで心臓を灌流し心筋細胞を単離した。当初培養シート上で培養し、標的細胞の長軸方向に引っ張り応力負荷をかける予定であったが、シートから細胞が剥離するため培養時間の変更あるいは心筋薄片を用いた実験を再検討中である。そこで単離した心筋細胞をラミニンコーティーングディッシュの上にのせ、4時間培養した心筋細胞を使用して基礎データを収集した。心筋弾性の指標である応力-歪み関係の実数部は、入力200Hzにて拡張期2.9±0.9nN/nm^2、収縮末期3.1±0.9nN/nm^2とその差は小さかった。また、60〜200Hzにおいては周波数依存性に直線増加が認められた。一方、強心剤としてドブタミン負荷した場合、予想に反し、収縮末期の増加は認められなかった。心筋粘性の指標である応力-歪み関係の虚数部は入力200Hzにて拡張期-1.1±0.9nN/nm^2、収縮末期-0.9±0.9nN/nm^2とその差は小さく、明らかな周波数依存性も認められなかった。今回は無負荷細胞において計測しかつ細胞の中心部のみ測定を行ったが、多点サンプリング行い、細胞の部位による差異も検討する必要がある。生検材料からの心筋細胞単離法では、20週以上の成体オスラットの心臓摘出後、左室心筋を約1×1×1mmのブロック状に切り出しトリプシン(0.02〜0.2%HBS溶液)とコラゲナーゼ(282U/ml〜947U/ml)を用いて表面灌流により心筋細胞を単離する方法の検討を行った。検討した条件の中では、0.02%トリプシンと282U/mlコラゲナーゼの組み合わせに0.1Hzの物理的攪拌を併用すると単離心筋細胞を得られたが、回収率が1%以下ときわめて低かったため、更に酵素反応時の温度調節や物理刺激の強度などを検討する必要がある。
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