実験には、前年度の結果に基づき週令の若い(4〜8週)オスのラットを用いた。ラット心臓からの生検材料による心筋細胞単離法として、4U/mlブロテアーゼ(type XXIV)と400U/mlコラゲナーゼAによる表面直流法を行った。左室心筋自由壁から約1×1×1mmの心筋ブロックを10個程度切り出し、(1)プロテアーゼ単独、(2)ブロテアーゼ+コラゲナーゼ、(3)コラゲナーゼ単独(1回〜2回)の順番で計3〜4回に分けて段階的に消化することにより心筋細胞を効率よく回収できることがわかった。なお、酵素による消化の際には物理的撹拌を併用する必要があった。CO2インキュペーターでの培養4〜6時間後では、数視野中1個程度電気刺激に応答する心筋細胞を認めた。次に、前年度、心筋細胞長軸方向へ引っ張り応力を加えた場合に、培養シートから剥離する問題があったため培養時間との関係を検討したが、培養12時間以降では、現在のところ電気刺激に応答する生存細胞の回収率はほぼ0%であったため、実験では培養後4〜6時間の心筋細胞を無負荷条件下で実験した。本年度は、心筋細胞の多点サンプリングを行い、細胞の部位による差異も検討する予定であった。しかしながら、培養に用いたゲルが比較的柔らかかったため、信号のS/N比が悪く、安定したデータサンプリングを行うことができなかった。そこで再びラミニンコーティーングディッシュ上での培養法に方法を変更し測定を行った。また、多点サンプリングも実際には辺縁部では安定して測定することが困難であったため、比較的中心部に近い部位で行った。心筋弾性の指標である応力-歪み関係の実数部は、強心剤(ドブタミン)による収縮力増加に伴い大きくなることが期待されたが、実際には多点サンプリングにおいてもその傾向は認められなかった。主に膜の性質を計測していた可能性が否定できなかった。
|