20kHzから40kHzの低周波超音波が、血管を拡張し、組織灌流を改善させる現象のメカニズムを検討するため、平成17年度においては、低周波超音波により、正常動脈の拡張がどの程度生じうるかを評価することから始めた。 麻酔下健常ウサギの大腿動脈に対して45kHzまたは1MHzの超音波をそれぞれ5分間照射し、14MHzの診断用超音波装置で大腿動脈径を測定した。また、45kHzや1MHzの超音波を照射せず、大腿動脈近位部を圧迫し血流を5分間遮断した後に診断用超音波で大動脈径を観察することで、反応性充血後の一酸化窒素産生(NO)による内皮依存性のflow-mediated vasodilatation (FMD)も測定した。結果として、FMDが正常レベルに保たれている動脈においても、われわれが使用した45kHzまたは1MHz超音波の照射では動脈拡張効果は不十分であった。 従来の報告との乖離の原因として、われわれが用いた45kHz超音波の音圧は45mW/cm^2と従来の報告に比べて低かったことがあげられる。このため、平成18年度においては、キャビテーション閾値を越える音圧の低周波超音波を用いて再度この効果を確認し、最も血管拡張が得られる音圧などの照射条件を評価し、至適条件下において、NOの代謝産物であるNOxの組織内産生を分析することで、本現象のメカニズムを検討していく予定である。
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