研究概要 |
超音波診断装置で得られる生体内部にはスペックルと呼ばれる超音波に特有な雑音が発生し、画質を大きく劣化している。本研究では、このスペックル雑音を軽減することを目的としている。従来、スペックル軽減を行うためには、周波数帯域内を分割して得られる多数の画像を加算平均する手法が提案されてきたが、ひとつの振動子の周波数帯域では効果的なスペックル軽減を行うことが難しかった。そこで、本研究では二周波数の超音波を同時に送波して、生体組織の音響的な非線形性で生成される二次波を用いることによって、従来より広帯域にわたって多数の画像を形成する。平成18年度では、2MHzと8MHzを同時に送波できるアニュラ型のPZT型振動子を開発して、エコーにおける4,6,10MHz成分を抽出して映像化を行うメカニカルセクタ型の超音波診断装置を試作した。平成19年度では、この超音波診断装置を用いて、in vitro, in vivoでの実験を行い、本手法の有効性を検討した。その結果、スペックル軽減効果を確認できた。一方、リング形状の2MHz振動子のビームがかなり広がっているため、2MHzと8MHzのビームが同等となるように、積層型のPZT振動子を設計、試作した。積層振動子による二次波をハイドロフォンによって測定した。その結果、4MHz、6MHz、10MHzの二次波の発生を確認した。しかし、課題として、8MHzの音響出力が2MHzと比べて10dB程小さいこと、試作振動子が平面であるため、ビームがかなり広いことなどを挙げられる。
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