本研究では触覚における2つの錯覚、仮現運動とファントムセンセーションを利用し、このセンサフュージョンを用いて情報を伝達する技術の開発を行っている。前年度(平成18年度)から、それまでの研究成果を踏まえ、提示刺激と伝達情報とを関連付けたアプリケーションについて検討を始めている。平成19年度は、振動刺激素子間の仮現運動、ファントムセンセーション像-振動刺激素子間の仮現運動、そしてファントムセンセーション像間の仮現運動という「3種類の仮現運動を利用する触覚ディスプレイ」を提案し、本研究課題の最大の目標が達成された。この触覚ディスプレイは触刺激素子3つを使ってベクトル情報を伝えるもので、将来的には携帯性に優れた触覚ディスプレイの実現に繋がる技術と考えており、携帯型ナビゲーションシステム等への応用が期待できる。前年度提案した「変調振動刺激を用いた本人認証システム」は、従来の認証システムが視覚情報ベースなのに対し、これを触覚情報ベースへ完全に置き換えてしまった点に特徴があった。平成19年度、本研究ではこのシステムの性能評価を更に進めている。前年度は触刺激に振動を利用していたが、これを触刺激に電気刺激を利用するシステムに切り替え、幅広い年齢層を対象に評価試験を実施した。今後は、前述の3種類の仮現運動を利用する触覚ディスプレイを用いて本人認証システムを構築し、その性能評価を行っていく予定である。
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