リハビリテーション領域における重要な課題である廃用性筋萎縮の進行予防に焦点を絞り、筋萎縮進行中のストレッチ効果、および筋肥大効果が報告されているアドレナリン受容体作用薬(clenbuterol ; Cb)投与との併用効果を調べた。 廃用性筋萎縮は、後肢懸垂法により作成し、2週間の実験期間を設定した。実験動物としてWistar系ラットを使い5群に分け、通常飼育群(CON)の他4群を実験群とした。実験群には後肢懸垂処置を行い、後肢懸垂群(HU)、1日1時間ストレッチ実施群(STR)、Cb投与群(Cb)およびストレッチとCb投与の併用群(STR+Cb)とした。 分析は、形態評価として筋湿重量、筋線維断面積、筋線維タイプを、機能的評価として電気刺激による筋収縮張力を測定した。その他、生化学的分析として筋原線維タンパク量を測定する。筋収縮張力の測定は、筋摘出時に実施し、データはコンピュータに保存し、冷凍保存試料の生化学分析とともに18年度に全データを分析する。17年度は組織化学的分析を実施した。ヒラメ筋湿重量は、相対重量比で比較し、HU群はCON群の68%に減少したが、Cb群は94%、STR群は77%、STR+Cb群は97%であった。Cb群およびSTR+Cb群はCON群と差がなく重量的には予防できたが、STR群は効果を検出できなかった。タイプI線維断面積は、HU群はCON群の42%に減少したが、Cb群は81%、STR群は58%、STR+Cb群は74%であった。ストレッチ効果を認めたが、併用効果は認められなかった。筋線維タイプ構成比率は、Cb群で有意なタイプII線維比率の増加を認めたが、STR+Cb群では変化なく併用の有用性が示唆された。18年度は、さらに対象ラット数を増加し、筋張力データの分析および生化学的分析を行い、総合的に併用効果を考察し、学会発表および論文化する予定である。
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