研究概要 |
前年度の研究で,COPD患者においてペダリング運動中に最も発生しやすい運動-呼吸リズムの比は,3:1(3回転に1呼吸)と2:1(2回転に1呼吸)であることが明らかとなった。したがって今年度は前年度に引き続き,LRC現象を意図的に誘発するための運動-呼吸同調システム使用の有無がCOPD患者におけるペダリング運動時の呼吸困難感および動脈血酸素飽和度(SpO2)の変化に及ぼす急性効果について検討した。 慢性安定期のCOPD患者7名(平均年齢66.6歳)に対し,AT負荷レベルでの10分間の定負荷ペダリング運動を行い,その時の運動-呼吸リズム同調現象(LRC)の発生率,呼吸困難感(Borg Scale)及びSpO2の変化を1分毎に測定した。 測定条件は(1)呼吸リズムを規定しない自由呼吸(free), (2)運動-呼吸のリズム比を2:1 (3)運動-呼吸のリズム比を3:1 の3つとし,それぞれランダムに別々の日に行った。そして3つの条件における運動中の各指標を比較検討した。 その結果,運動-呼吸同調システムを使用する事によってLRC現象の発生率はfree(16.2%)に比べて2:1(22.5%),3:1(47.1%)と上昇し,free3:1との間に有意な差が認められた。またリズム比3:1の条件では運動時の呼吸困難感がfreeおよびリズム比2:1に比べ有意に軽減し,また運動時のSpO2の低下も有意に抑制出来ていた。 以上のことから,COPD患者のペダリング運動時には運動-呼吸のリズム比を3:1に制御することで,呼吸困難感の軽減やSpO2の低下を抑制でき,安全で効果的な運動療法が実施出来ることが示唆された。今後は急性効果のみならず,長期的な運動療法の効果について詳細にしていく必要がある。
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