研究概要 |
本年度は、昨年と引き続き慢性期の安定した状態にある心疾患患者を対象に、サイトカインの中で特に昨年度運動耐容能と関連が認められた可溶性TNFレセプターについて検討を加えた。【はじめに】可溶性TNFレセプター1(sTNFRI)および可溶性TNFレセプター2(sTNFR2)は冠動脈疾患(CAD)患者において運動耐容能との関連が見られるとの報告はあるが、この関係が疾患特異的であるかどうかの検討はまだなされていない。【目的】健常者においてもsTNFR1ならびにsTNFR2と運動耐容能との問に同様の関連性が認められるかどうかを検討する。【対象・方法】慢性期の男性CAD患者15名(平均年齢71.4+/-6.3才、BMI25.2+/-2.8)と健常男性17名(平均年齢29.8+/-7.5、BMI22.6+/-2.8)を対象に静脈採血によりsTNFR1とsTNFR2を測定し、採血から1週間以内に心肺運動負荷試験(CPX)を実施しpeakVO2とAT(anaerobic threshold)を測定した。CPXについてはCAD群では毎分15ワット、健常群では毎分20ワットのランプ負荷法にて症候限界性に行いVスロープ法にてATを決定した。【結果】各群のsTNFR1は1681+/-619(CAD群)、1104+/-213pg/mL(健常群)であり、またsTNFR2は2852+/-879(CAD群)、1751+/-375pg/mL(健常群)であった。またpeakVO2は18.3+/-3.8(CAD群)、37.3+/-4.9mL/kg/min(健常群)、ならびにATは11.7+/-2.8(CAD群)、17.7+/-3.5mL/min(健常群)であった。sTNFR1とpeakVO2の関係は、全体ではr=-0.617、p=0.002、ATとの関係はr=-0.523,p=0.0025と良好な負の相関をみとめた。それぞれの群については、r=-0.467(健常群)、r=-0.373(CAD群)と傾向であるが負の相関関係が認められた。sTNFR2についても同様の傾向がみられた。ATとの関連については、全体としてはr=-0.523、p=0.0025と良好であったが、各群については関連性が弱かった。【まとめ】sTNFR1とsTNFR2は運動耐容能と関連性が認められ、その機序については今後検討が必要であるが、冠動脈疾患患者のみでなく、健常者においても血中のTNFレセプター濃度が高いほど運動耐容能は低い傾向があるという結果が得られた。
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