研究概要 |
虚血性心疾患に対する包括的心臓リハビリテーション(心臓リハ)の効果はすでに内外で認められているが、わが国において積極的に行っている施設はまだ少ない。術後や発症後の抵抗力の低下した患者に対しての過度な運動は更なる免疫機能の低下を招くことが危惧される。しかし、これまで心臓リハが及ぼす免疫機能への影響を調査した研究は内外を通じていまだ見られない。本研究は、開心術後または心筋梗塞発症後に低下する細胞性免疫機能に対して、運動療法を中心とする心臓リハがどのような影響を及ぼすか、回復期外来通院型心臓リハを実施しその効果を検討した。【対象、方法】急性心筋梗塞後または冠動脈バイパス術後に急性期心臓リハを行い、引き続き退院後も外来通院による心臓リハを希望した男性患者9名(平均年齢63.4±6.1才)を対象に、外来での患者教育を含めた運動療法(週1回)と在宅での歩行運動を指導した。加えて細胞性免疫機能としてNK(natural killer)細胞活性と可溶性TNFレセプター1の変化を静脈血にて測定した。【結果】期間中に重篤な事故は皆無であった。peakVO2は16.8±2.7から19.4±2.2kL/kg/min(p=0.008)と増加し、脂質代謝はHDLコレステロールが42.0±10.9から49.0±10.4mg/dL(p=0.028)と改善した。NK細胞活性は49.4±14.7から50.2±11.2%に増加したが有意ではなかった。また同様に可溶性TNFレセプター1は1283±634から915±102pg/mLと減少したが傾向にとどまった(p=0.051)。【結論】外来通院型心臓リハはわが国において普及されるべきシステムであり、細胞性免疫やサイトカインにおいても悪化をきたすことはなく,安全でかつ効果の認められることが十分期待できる。
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