研究概要 |
【対象】 日本歯科大学歯学部附属病院にて手術を受けた口腔腫瘍術後患者(すべて舌がん)6名. 【方法】 以下の課題を実施した. (1)口腔腫瘍術後患者の発話サンプルの採集:術前・術後 日本語の単音節100単音および音声言語医学会の構音検査で使用されている単語50語,さらに日本語の母音/a//i//u//e//o/,および障害を受けると思われる子音として/t//b//k//n/の子音を含む単音節についてサンプルの採取を行った。 (2)発話明瞭度と会話明瞭度の測定 (3)発声発語器官の運動機能の評価 得られた発話サンプルの音響学的分析を行い,手術による影響,発話明瞭度および会話明瞭度の関連性の検討を行った. 【結果】 1.術前・術後の構音の変化;すべての患者において発話明瞭度と会話明瞭度の低下が見られた.さらに母音の基本周波数を示すフォルマントの変化が見られた. 2.手術による影響;舌の運動障害の重症度が高いほど各母音の音響学的特徴に差がなかった.また,この特徴は個人差が多かった. 【考察】 1.母音の基本周波数のフォルマントでは第1フォルマントの高値が見られた.これは舌運動の低下により舌と口蓋の狭めが得られなくなったことを示すものであると考えられる. 2.発話明瞭度が60%以上の群と60%未満の群を比較すると,60%未満群では子音の破裂音成分の特徴が少なく,このことが発話明瞭度を左右する要素である可能性があると考えられた.
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