摂食・嚥下障害で口腔期での舌の後方送り込み障害が顕著な症例や、口腔期と咽頭期との連携が不十分な症例に対して、外舌筋と舌骨上筋群を対象に、低周波治療を行ったところ、健常者において通電に伴い、舌根部の軽度挙上、喉頭蓋の翻転傾向、被裂軟骨の内転運動と声門閉鎖傾向、梨状陥凹の拡大が観察された。 今年度においては、本法の有効性を摂食・嚥下障害患者で検証し、低周波による嚥下関連器官の動態変化を内視鏡的に分析することを目的に研究を行った。 本学の主研修病院である新潟リハビリテーション病院の摂食・嚥下障害患者2名を対象に、低周波治療器(OG-GIKEN社製 PURSECURE-PRO KR-7)を使用して、オトガイ下から甲状軟骨上部までの顎下部皮膚上に、正中をはさんで両側平行に低周波電極を装着し、40Hz・32〜56Vの条件下で、間歇的に通電を行い、舌根部の軽度挙上、喉頭蓋の翻転傾向、梨状陥凹の拡大が認められた。この嚥下関連器官の動態変化は、片麻痺患者の場合、麻痺側より健常側での動態変化がより大きく観察された。 嚥下反射を誘発することは困難であったが、その前段階まで誘導することが可能であり、本法が口腔期や咽頭期における摂食・嚥下障害の改善に有効である可能性が示唆された。 尚、2006年3月23日〜25日にアメリカ合衆国、アリゾナ州、スコッツデールで開催された第14回 嚥下障害研究学会においても、特別セッションとして、嚥下障害に対する治療法としての電気刺激に関して、複数の研究者からの発表があり、訓練法としての電気刺激がトピックとして取り扱われていることから、本方法は、その刺激方法が若干異なるものの、その有効性には確実性があることが示唆され、今後さらに検証していく必要があると考えられた。
|