摂食・嚥下障害で口腔期での口腔後方への送り込み障害が顕著な症例や、口腔期と咽頭期との連携が不十分な摂食・嚥下障害患者に対して、低周波治療を試行し、嚥下関連器官の動態変化をビデオ内視鏡により観察したところ、低周波通電に従い、舌根部の軽度挙上、喉頭蓋の翻転傾向、披裂軟骨の内転傾向、梨状陥凹の拡大が認められた。この動態変化は、健常者においては、電極の装着位置を顎下部に左右対称にすることで、ほぼ左右対称の変化が観察されたのに比し、片麻痺患者の場合、麻痺側より健常側での動態変化がより大きく観察された。 今年度においてはさらに本法の有効性を検証するため、引き続き摂食・嚥下障害患者に低周波治療を行い、嚥下関連器官の動態変化を内視鏡的に分析する事を目的に研究を行った。 本学の主研修病院である新潟リハビリテーション病院の摂食・嚥下障害患者を対象に、低周波治療器(OG-GIKEN社製PURSECURE-PRO KR-7)を使用して、オトガイ下から甲状軟骨上部までの顎下部皮膚上に、正中をはさんで両側平行に低周波電極を装着し、40Hz・32〜56Vの条件下で、間歇的に通電を行い、舌根部の軽度挙上、喉頭蓋の翻転傾向、梨状陥凹の拡大が認められた。この通電中の嚥下関連器官の動態変化は、片麻痺患者の場合、麻痺側より健常側での動態変化がより大きく観察された。週1回、約3か月間の低周波治療により、片麻痺の患側の嚥下器官の活動性の向上により、ほぼ対称的な運動が観察された。本法が口腔期や咽頭期における摂食・嚥下障害の改善に有効である可能性が示唆された。 尚、本研究結果に関し、アメリカ合衆国ボルチモアのJohns Hopkins Univ. School of MedicineのPalmer教授(前嚥下障害研究学会(米国)会長)の指導を受けるとともに、同大学の最新の嚥下治療の調査研究を行った。
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