研究課題
我々は、マウス線維芽細胞と人工骨のハイドロキシアパタイトによる三次元様増殖の形成を指標として温熱療法の最適条件を検討してきた。18年度の研究では、温熱刺激による正常ヒト線維芽細胞の平面絹を媒体とした増殖形態の変化を調べ、そのメカニズムを分子生物学的に検討することを目的とした。正常ヒト細胞と平面絹を混合し、温浴槽を用いて40・43・45℃で各10分間の温熱処理を行い1週間毎に観察した。その結果、三次元様増殖はきざし、出来かけ、ほぼ形成、形成へと段階的に成就されていることを見出した。マウス細胞とHAを用いた実験では、三次元様増殖の形成を指標として温熱刺激の適用量を示してきたが、ヒト細胞と平面絹を用いた実験からは、きざしや出来かけを指標とすることが有用であることが判った。一方、活性化したp38MAPキナーゼとHsp27の検出はウエスタンブロット法により行った。43℃で温熱処理をしたものについては、p38MAPKとHsp27の活性化が認められた。このことから、p38MAPKのシグナル伝達を介してHsp27の熱ショック蛋白質群がたくみに連動して働き、アポトーシスを防御すると共に、コラーゲン産生による細胞外マトリックスが合成され、細胞移動により重層した三次元様構造が作られたものと推察された。以上のことから、今回用いた培養細胞は、初代培養細胞(正常二倍体)であり、完全に正常性を保っているのでヒトの生体内における細胞機能の解明に直接結びつく成果として期待される。加えて、三次元様増殖形成のメカニズムの解明を進展さすことができた。今後の実験で正常ヒト細胞の三次元様増殖の適用量の決定とメカニズムの解明が進めば、温熱療法の効果判定を細胞レベルのみならず、遺伝子レベル・分子レベルで決定するための糸口になると期待される。
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