研究概要 |
1.研究目的:本年度の研究目的は、(1)上肢および下肢の同時ペダリング運動遂行時に、ペダリング周期に連動した皮膚反射の周期的変化について明らかにすること、(2)上・下肢の位相が異なる同時ペダリング運動時の皮膚反射の周期的変化について明らかにする、ことであった。 2.研究方法:被験者は健常成人11名であった。各被験者には運動課題として以下の2課題を行わせた、(1)運動課題I:被験者は固定式負荷可変自転車に座し、上肢ならびに下肢の独立したペダリング運動を同一回転数で行った。回転数は上肢・下肢ともに30,45及び60rpmの3種類とした。(2)運動課題II:被験者は上肢と下肢の位相が0°ならびに180°の同時ペダリング課題を行った。さらに、被験者はペダリング運動時の筋電図活動と同レベルの筋活動を等尺性筋収縮で行った。筋電図記録は左右両側の腕橈骨筋、上腕2頭筋、三角筋、外側広筋、前脛骨筋、内側腓腹筋より表面双極誘導法にて導出し、増幅した。皮膚反射は手関節部にて浅橈骨筋ならびに足関節部にて浅腓骨神経を知覚閾値の2から3倍にて電気刺激することにより、上肢及び下肢筋群より導出した。 3.結果:上肢及び下肢による同時ペダリング運動時にはペダリング位相に依存した皮膚反射の周期的変化が観察された。しかし、この変化はペダリング速度には影響を受けなかった。上肢・下肢のペダリング位相差が皮膚反射に及ぼす影響を調べた結果、例えば上肢の皮膚反射振幅は、電気刺激が与えられた下肢の位相に影響を受けず、常に上肢の位相に一致した変化を示した。同様の結果は下肢皮膚反射にも見られた。上・下肢同時ペダリング運動時の皮膚反射の振幅と筋電図量との関係は、等尺性筋収縮時の結果かとは異なるものであった。 4.考察:上・下肢のペダリング運動は脊髄リズム発生器(CPG)が重要な役割を果たしていると考えられている。しかし、これまで、両CPGがどの様に相互作用するかについては不明な点が多かった。そこで、本研究ではCPGの制御下にある皮膚反射の動態を時・下肢同時ペダリング運動をモデルとして検討した。その結果、ペダリング運動時の皮膚反射は静的な筋収縮課題とは異なっていた。この結果は、ペダリング時の皮膚反射の変化にCPGが関与することを強く示唆する。また、本研究では上・下肢の位相差は皮膚反射動態に影響を与えないことが明らかになった。この結果は、健常成人では上肢ならびに下肢のCPGは独立して駆動させることが可能であることを強く示唆する。しかし、このCPG制御が学習によって得られたものか、生得的なものかについては不明であり、平成18年度に検討する。
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