昨年度に引き続き、フィールド調査を中心とした。主として、春日大社の巫女舞の所作の伝播による変容を比較するため、「お田植え」の舞を中心に、以下の日程で、映像収録を行った。 平成18年3月15日 春日大社お田植え祭 平成18年4月15日 金刀比羅宮お田植え祭 平成18年5月8日 出羽三山神社お田植え祭 平成18年6月14日 住吉大社お田植え祭 平成19年1月4日 住吉大社 踏歌 (お田植え舞とは異なるが年に一回の行事なので収録) 収録された映像から、4神社のお田植えの舞に関する情報を 「祭りの由緒」、「継承」・「指導状態」、「琴の有無」・「歌詞」・「開催日時」、「場所」、「舞人」、「隊形」、「髪型」、「翳し」、「採り物」、「歌」、「楽」、「耕作場面」、「牛の登場」、「移動」などの項目について、まとめニクセルファイルに一覧表として、データ・ベース化した。さらに今回の調査の中で、出羽三山神社にて、明治期の歌譜の書写の複写を入手する事ができた。さらに天理大学では、「大和舞」の歌譜の複写ならびに綾小路家の神楽資料の目録を入手することができた。こうしたことから、本研究のような動作の考古学を考察するには、動作研究の前提として、日本の古代・中世ならびに明治初期の歴吏認識が不可欠であること、また有形史料についての歴史学的・文化財学的知識が不可欠であることを理解した。したがって、現代の身体運動の認識から分析することを中断し、現在、文献・有形史料の収集も平行して行っている。特に、春日大社と住吉大社の舞は両者とも古く、伝承関係が不明であり、その形や歌の類似性と差異性には、興味深い歴史的関連が発見できるが、住吉大社の舞が平成の復刻であることも合わせて、現時点の動作のままでの考察だけではなく、サイド史料が必要である事がわかった。
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