神楽に代表される日本独特の舞踊や芸能の動作の特徴を映像資料から抽出し、このジャンルの舞・所作の特徴を抽出することを目的とし、具体的には、伝承元とされる春日大社・伝承先となる金刀比羅宮・出羽三山神社ならびに伝承先と考えられる住吉大社の4神社の巫女舞を調査対象とした。動作の国際記譜システムであるLabanotation法ならびにYourMove法を使って流れの中での動作特徴について考察した。さらに、日時・装束・着付け・髪型・道具類など動作以外の情報も重要に機能しているジャンルのため、歴史学的視点からの文献資料・絵画資料・舞譜などの有形資料の収集と伝承形態・現状などのインタビューによる調査を行った。 時間的に伸び縮みする日本音楽の特徴を示す巫女舞の歌を採譜し、五線譜化し、その流れに沿って身体動作のアウトラインをYourMove法で記譜すると、そこに舞踊的な構成の形式や、繰り返しによる、所作の特徴が見えて来た。また各神社での継承には、親子のような年齢間隔で指導者的な女性が1名存在し、口承で舞踊文化を守っていた。4神社の舞の形は、類似する同一的な特徴も示しているが、個別性、差異性もあり、さらに、それぞれの神社でも再興や復興があり、廃絶したものや、形を変更したものもある。文字資料や絵画資料・写真などは、当時を思わせるが、数少ない断片からでは、失われた時間を繋ぐのは難しい。 舞踊や芸能の発生研究は、現代のなかで希薄になり形骸化してしまった身体文化に過去からもたらされる恩寵であり、叡智である。人間の文化の中に、いつの時代もどこの地域にも舞踊としか言いようのない身体文化のあることの意義を21世紀にふさわしく継承し人間の身体が本来もっている叡智を甦らせることは我々の課題であり意義深い。そして継承者不足や廃絶・変形の危機にある神楽などの日本文化の継承・保存・復刻に役立つ事となるだろう。
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