本研究の目的は、教員養成系大学大学院レベルでの体育教師養成カリキュラム改革と教育実習プログラムの実際について、改革を進める諸外国、特に、英語圏5カ国(アメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド)の最新の動向を実地調査・国際比較することによって、わが国の教員養成系大学の大学院レベルでの教育実習を含む実践的カリキュラム改革のあり方についての知見を得、我が国の今後のあり方を検討することにあった。得られた知見を要約すると下記の通りである。(1)北米アメリカ・カナダでは、体育教師養成だけに力点を置く大学は減少傾向にあり、コーチ養成を兼ねたスポーツ科学に傾斜している。義務教育教員養成に関しては大学院レベルでも教育実習を課している。(2)近年、フィンランドに代表されるように教育改革に熱心な欧州であるが、イギリスでは、教育実習を重視した教員養成課程改革が積極的に取り組まれており、体育・スポーツ科学研究開発にも熱心である。(3)オーストラリアの体育科教員資格は4年制の応用科学学士(教育)卒業によって得られるが、3年次で20日、4年次で60日の教育実習が課せられている。(4)ニュージーランドでは、3年制の学士課程修了で教員資格を得られるが、さらに1年間のディプロマコース(専攻科)に進学する者も多く卒業までに20週間以上の教育実習が課せられ、大学研究機関と教育委員会、学校現場との密接な連携が見られた。以上から、今後の我が国の急務の課題として(1)学部・大学院の一貫した教育実践的授業の整備、(2)教育実習期間の延長と学年積み上げ式指導の充実、(3)それらを支える大学・教育委員会・学校現場の連携体制の整備があげられるが、上記数カ国の事例は、今後のわが国の改革モデルとして参考になるものである。
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