本研究(研究課題番号17500403)の目的は、動きの質的体験の相違が、学習者における動きの質(a)、ボディ・イメージ(b)、舞踊セルフ・エフィカシー(c)、および(b)・(c)を包括すると考えられるセルフ・エスティーム(d)に、どのような影響を及ぼすかについて検討することであった。そのために今年度(平成19年度)は、先行研究結果〔清水、2005(教育実践研究13:55-61);清水、2006(九州大学人間環境学府博士論文 人環学博甲第146号)〕を踏まえ、さらに第2期(平成18年度)で提示された、舞踊における心理的一側面の仮説モデル〔清水、2007(教育実践研究15:69-74)〕を参考に、動きの質的向上の体験が、舞踊セルフ・エフィカシーやボディ・イメージだけでなく、セルフ・エスティームにおいても変容をもたらすかどうかに着目し検討を行った。その結果、学習用舞踊ムーブメントによる動きの質的体験の相違は、舞踊学習者のセルフ・エスティームに肯定的に影響することが示唆された〔清水、2008(教育実践研究16:73-79)〕。今後の課題として、動きの質的向上と、ボディ・イメージ〔清水、2004(健康心理学研究17(2):22-31)〕や、舞踊セルフ・エフィカシー〔清水・橋本、2005(福岡教育大学紀要54:53-62)〕、セルフ・エスティームといった認知的要因を含む自己概念との関係性について、媒介変数を含めて心理的メカニズムの解明を進めるべきであろう。 まとめとして、本研究では第1期(17年度)から第3期(平成19年度)において、舞踊における動きの質的向上と心理変数間との関係に着目しながら検討し分析を行った。その結果、舞踊の学習における動きの質的体験の相違は、学習者の動きの質、ボディ・イメージ、舞踊セルフ・エフィカシー、そしてセルフ・エスティームを含む心理的側面に肯定的な影響を及ぼすことが明らかとなり、舞踊の動きと心理変数における1つの関係性が明示された。(755字)
|