研究概要 |
幼児から高校生に至る子どもたちの咬合力と、咬合力を発揮させる咀嚼筋形態の実態を把握するとともに、運動経験・運動習慣が咬合力と咀嚼筋の発達に及ぼす影響について検討するため、本年度は幼児から小学生を対象に咬合力、咬筋横断面積および脚伸展筋力、重心動揺測定を実施した。 幼児の脚伸展筋力測定には安全性を考慮し、新たな測定器を独自に開発し測定に望んだ。この測定器により、下肢筋力値とその発揮パワーを測定することが可能となり、検討に加えることとした。 本年度は幼児の咬合力と重心動揺との関連性に着目して論文をとりまとめた。要旨は以下の通りである。 身体活動量の低下などに起因する咬合力の低下が,身体平衡機能の発達に負の影響を及ぼしているのではないかと考え,幼児の咬合力と静的姿勢保持の指標である重心動揺との関連性を検討し,咬合力と身体平衡機能との関連性を明らかにすることを目的として,5歳〜6歳の幼稚園児47名(男児18名,女児29名)を対象に,咬合力測定と重心動揺測定を実施し,各項目を比較検討し,以下の結果を得た。 1.咬合力値では,男女間の性差は認められなかった。 2.重心動揺では,閉眼時の単位軌跡長で男児が女児に対して有意に高い値を示した。単位面積軌跡長では,男女間に性差は認められなかった。 3.咬合力の高い幼児では,閉眼時において単位軌跡長との間に有意な負の相関が認められ,咬合力の高い幼児ほど身体平衡機能が優れていた。 4.咬合力の低い幼児の重心動揺において,その揺れの特徴として左右方向に高周波数帯域,すなわち小刻みな揺れを示す特徴が認められた。 今後は、上記の結果に加え、咀嚼筋形態との関連性と運動習慣ならびに運動機能との関連性を検討するとともに、対象者を中学・高校生まで拡げて横断的資料の作成に努めたい。
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