研究概要 |
幼児から高校生に至る子どもたちの咬合力と、咬合力を発揮させる咀嚼筋形態の実態を把握するとともに、運動経験・運動習慣が咬合力と咀嚼筋の発達に及ぼす影響について検討した。 咬合力の高い幼児では,閉眼時において単位軌跡長との間に有意な負の相関が認められ,咬合力の高い幼児ほど身体平衡機能が優れていた。また、咬合力の低い幼児の重心動揺において,その揺れの特徴として左右方向に高周波数帯域,すなわち小刻みな揺れを示す特徴が認められた。 幼児期の咬合力および咬筋横断面積については、乳歯咬合完成直後の3〜4歳児と第一大臼歯萌出の影響を受ける5〜6歳児頃の前期と後期に分類し検討した。幼児期の咬合力と咬筋横断面積との問には有意な相関は認められなかった。 咬筋の横断面積は、6歳までの幼児期には有意な変化はみられなかったが、7歳からは年齢に比例して咬筋の発達が認められた。中でも10歳から11歳までの問は、他の年齢間に比して高い増加傾向を示した。咬筋横断面積と身長と体重には有意な相関が認められたことから、発育に応じた発達がなされていることが伺えた。 小学生高学年(5年、6年)に着目し、運動系スポーツクラブに所属している児童と、所属していない児童との間で、咬筋横断面積および咬合力を比較したところ、有意に運動系スポーツクラブに所属する児童の集団がいずれにおいても高い値を示した。このことから、児童においても運動習慣は咬筋の発達に影響を及ぼす重要な因子であることが確認された。しかし、下肢伸展筋力値と咬合力および咬筋横断面積の間には総体的には有意な相関は認められなかった。 以上のことから、咬合力および咬筋横断面積と運動機能との関連性については、小学生高学年から、その関連性が顕著にみられてくることが推察された。また運動習慣は、それに強い影響を及ぼす因子であることも示唆された。
|