研究概要 |
本研究は,スポーツ活動を行うことが,定年退職後の日常生活に,どのような影響を与えるのかについて検討しようとしたものである.そこで,生涯スポーツとして中高年の人々に広く愛好されているテニスを題材にして,自己効力感,社会的スキル,および日常生活における体力の様子について,茨城県内に住む60才前後の男性16名を対象に調査したものである. その結果,以下のようなことが明らかになった. テニスを始める前と現在を比較してみると,自己効力感については他人との関係において積極的な行動や言動が増加し,さらに失敗してもまたやろうという向上心が高まっていくように見受けられた.また,社会的スキルについては対人関係において,周りの人々とうまく対応する能力が増しているように思われた。このことから,定年退職後の男性がテニスというスポーツ活動を行うことは,対人関係を広くて積極的で楽しいものにし,有意義で活動的な日常生活を送る上で,いくらかの手助けになるものと思われる。 体力に関する意識の変化は,テニスを始める前と現在を比較してみると,歩くスピードを上げても疲れにくくなった,階段の昇り降りが苦にならなくなった,さらに日常的に不快感を伴っていた肩こり等が軽減された,という報告が見られた.中高年になると体力の衰えを実感する人々が多いと思われるが,定期的なスポーツ活動は,日常生活における体力的な問題の解消に,いくらか貢献できるものと思われる.
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