研究概要 |
生体酸化は老化や発癌に関わる現象として重要である。我々は,生体において繰り返しメカニカルストレスを負荷することで8-OHdG等の酸化代謝物の量が減少する可能性を報告している。そこで細胞レベルでのメカニカルストレス負荷と酸化ストレス応答機構との関連について解析を試みた。培養ヒト線維芽細胞をコラーゲンコートしたシリコン膜上に播種し,シリコン膜を伸展することでメカニカルストレス負荷を行った。この細胞における伸展刺激有無での酸化ストレスへの応答を種々の濃度の過酸化水素水を添加し時間経過を追って解析した。細胞内の遺伝子レベルおよび分子レベルの変化をcDNAarray法および抗体パネル(シャペロン分子,MAPKファミリー分子,Rhoファミリー分子,Cell cycle制御系分子,細胞骨格構成分子等を含む)を用いてのプロテオーム解析により調べた。2次元電気泳動後,抗体パネルを用いた半網羅的解析では細胞骨格構成分子,ERK1をはじめとするシグナル伝達分子,GRP78などシャペロン分子群に発現量の増減が起こることが明らかになった。更にこの系において,テトラスパニンweb構成分子が細胞の接着を介して伸展刺激に関与する可能性が考えられた。このためsiRNAによるノックダウンを行ったところ細胞の接着能が低下することが示された。以上の結果より,伸展刺激時の酸化ストレス応答に関わる分子群は蛋白質分子の量および質的制御に関わる物質であり,細胞の生存に関わるシグナル伝達との関連も考えられる。又,テトラスパニンウェッブ構成分子のメカニカルストレス受容への関与を示唆する結果を得た。
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