通常高地トレーニングの運動内容は、有酸素運動が中心となる。しかし近年では、高地環境が無酸素性運動時の生理応答に及ぼす影響に関する研究が注目されている。McLellan(1990)らは、通常酸素濃度下と10.8%酸素濃度下で、30秒および45秒の超最大ergometer運動を行い、発揮されるパワーにはほとんど差がないものの、10.8%酸素濃度下では全身酸素摂取量が低下し、血中乳酸濃度が増大することを示している。高地における無酸素性運動時には、低酸素ストレスが負荷され、生体内の脱酸素化が亢進することが推察されるが、先行研究では、全身酸素摂取量や動脈血酸素飽和度など全身的な生理学的指標による研究が多く、活動筋など局部内の酸素動態について検討されたことは少ない。 筋赤外線分光法(NIRS)は、局部筋内におけるヘモグロビンの脱酸素化状態を非侵襲的に評価することが可能であり、我々はこの方法を用い、短時間の動的運動に活動筋内の低酸素化が大きく亢進することを明らかにした。比較的低い国内高地において頻繁に行われる有酸素性運動や無酸素性運動(筋力トレーニング含む)を行った場合、生体内、特に活動筋内の低酸素化か大きく亢進することが予想される。平成17年度は運動の条件を変えた無酸素運動(45〜60秒間のWingate Test)および有酸素運動(120〜150W ・ 30分間ergometer運動)を実施し、NIRSによる外側広筋内酸素動態、全身酸素摂取量、血中乳酸濃度、心拍数、動脈血酸素飽和度、血圧等の生理応答について比較検討を行っている。
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