体育・スポーツ場面において、高い競技パフォーマンスを達成する上で重要な要因となっている持続的注意能力は、認知機能との関連で、これまでは主として心理学的概念として論じられてきたが、背景脳波や事象関連電位の研究により、ようやく実証的操作による検証が可能となったといえる。そこで、本研究では、試合などでの比較的長時間の注意集中を求められるオープン・スキル系の選手を対象に、意識下での注意能力の変動について明らかにするとともに、競技パフォーマンス向上の為の注意メカニズムの検討とバイオフィードバック技法の方略を明らかにして、随意的コントロールの可能性についても明らかにすることを目的とした。今年度は、実験室的研究ではあるが、オープンスキル・スキル系の重要な要素とされている「息の合う」プレーを注意力を構成する一要素と捉え、協同作業における精神生理学的特徴について検討を行った。重回帰分析を行った結果、「息が合う」ことに影響を及ぼす要因として、息づかい(偏回帰係数=0.315)、心拍数(同=0.159)が見いだされた。この結果に基づき、注意力を維持する呼吸法についての検討を行った。呼吸法として、順腹式呼吸法、逆腹式呼吸法、太極拳式呼吸法を取り上げ、心拍数と脳波を基に調べた結果、逆腹式呼吸法と太極拳式呼吸法で、覚醒水準が保て、α波と負の相関が見いだされ、呼吸法と脳波のパターンを組み合わせたバイオフィードバック・システムの構築についての基礎的なデータを得た。
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