本研究では、試合などでの比較的長時間の注意集中を求められるオープン・スキル系の選手を対象に、競争ストレス下での注意能力の変動について明らかにするとともに、競技パフォーマンス向上の為の注意メカニズムの検討とバイオフィードバック技法の方略を明らかにして、随意的コントロールの可能性について以下の実験結果を得た。 (1)オープンスキル系の種目として高校サッカー選手を対象に、競技レベルとコンディショニングとの関係について調べた結果パフォーマンスの低下と抑うつ傾向の高さとに密接な関連を見いだし、競争ストレスの軽減に対するリラクセーションのためのバイオフィードバックの必要性について示唆するものであった。 (2)競争ストレス時における注意変動のメカニズムをみるために、事象関連電位としてCNV、PINVを取り上げ、前者には競争ストレスが、後者では注意の対象に対する持続性が反映されることが明らかにされた。この結果は、注意の持つ3つの構成要素の内、覚醒などの維持機能と選択機能を反映しており、今後反応などの制御機能を高める上でバイオフィードバックの方略を考える上で重要な知見を得た。 (3)サッカー、フィールド・ホッケー、バスケットなどのオープン・スキル系種目での注意スタイルを明らかにするために、T-TAISを基に調べた結果、External Overload、Internal Overload、Narrow attentionにおいて、陸上競技、器械体操などのクローズド系種目とは明らかに異なる注意特性を持っており、また、集中力を阻害する要因が種目特性によって異なることが示された。 (4)注意による行動のコントロール機能を見るために、高齢者の認知機能向上のための運動を実施し、行動を統合する役割を見いだした。
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