研究概要 |
本研究では、試合などでの比較的長時間の注意集中を求められるオープン・スキル系の選手を対象に、競争ストレス下での注意能力の変動について明らかにするとともに、競技パフォーマンス向上の為の注意メカニズムの検討とバイオフィードバック技法の方略を明らかにして随意的コントロールの可能性についての検討を行った。実験ではサッカー、ラクロスなどのオープン・スキル系種目の重要な要素とされている「息の合う」プレーを注意力を構成する一要素と捉え、協同作業における精神生理学的特徴について調べた。重回帰分析を行った結果、「息が合う」ことに影響を及ぼす要因として、息づかい、心拍数が見いだされた。この結果に基づき、注意力を維持する呼吸法についての検討を行った。呼吸法として、順腹式呼吸法、逆腹式呼吸法、太極拳式呼吸法を取り上げ、心拍数と脳波を基に調べた結果、逆腹式呼吸法と太極拳式呼吸法で、覚醒水準が保て、α波と負の相関が見いだされ、呼吸法と脳波のパターンを組み合わせたバイオフィードバック・システムの構築についての基礎的なデータを得た。次に、事象関連電位(CNV, PINV)を用い、競争ストレスによる注意機能の低下現象を明らかにした。特に、前頭部における低下を見いだせたことは、これまでの注意モデルに客観的な生理学的検証を示したといえる。さらに、触れることによる注意水準の維持を狙った健康運動を用い、情動や認知機能に及ぼす影響を調べた。認知機能の指標としてP300を用い、積極的な効果を検証すると共に、右半球の前頭部におけるα波の顕著な出現を見いだし、情動面の改善にも有効なことを見いだした。
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