研究概要 |
本研究ではストレスによる味覚の変化(感受性または嗜好性)を主としてラットの行動実験からとらえることを目的としている.本年度は初年度に構築したリッキング計測,解析システム,および従来から味覚の行動実験として多用されている2瓶選択法による味覚嗜好テストを用いて実験を行った. ストレスとしては炎症性ストレスとして,細菌の内毒素で発熱物質として知られる(1)リポポリサッカライド(LPS)の腹腔内投与(20および100μg/kg体重,1週間毎2回),非炎症性ストレスとして(2)水浸ストレス(深さ15〜20mm,ケージ内自由行動),および(3)拘束ストレス(金属製拘束器により毎日午前10:00〜15:00の5時間)を各々2〜4週間与えて味覚の嗜好に及ぼす効果を検討した.嗜好テストに用いる味溶液は,嗜好の変化をより鋭敏に検出できるように工夫して予備実験を行い,苦味を除く4基本味(甘,酸,塩,旨味)各々の溶液に0.1mMの塩酸キニーネ(苦味)を混合した溶液を用いた. LPSの投与および水浸ストレス負荷の実験においては行動実験としてリッキングの計測を主としたが,ストレス負荷前後で有意な差を認めなかった.拘束ストレス負荷においては,2瓶選択法を主として用いて嗜好を調べた結果,負荷後1週間で甘味および塩味の嗜好の上昇が見られた.これらの結果について,実験中に採血して測定した血清亜鉛,鉄,銅イオンの動態と合わせて考察している.
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