研究概要 |
本研究では,生活構造分析を用いて,地域で生活する障害者のスポーツ活動の場としての総合型地域スポーツクラブのあり方を明らかにすることを目的とした.また,フィールワークから得られた知見をフィードバックする実践的研究として位置づけた.研究の方法としては,アンケート調査,インタビュー調査,フィールドワークを用いた.研究の結果,以下の点が明らかになった. 1.アンケート調査:障害者の生活構造の一般的特徴は,階層的に下層に位置し,土着性が強いこと,一方で,都市的生活構造の特徴である私化・同調の傾向を有することであった.そのような中,スポーツを実践している者の特徴は,比較的上層で流動性が強いこと,及び,公共化・同調の傾向があることであった.したがって,生活構造という側面から障害者のスポーツ実践の量的側面を捉えると,その絶対数の少なさは障害者の生活のあり様に強く規定されているといえる. 2.インタビュー調査:障害者をスポーツへと導く要素として,「個人の行為力」「偶然性」「現実的な生活レベルでの人間関係」という3つのカテゴリーが抽出された. 3.フィールドワーク:障害者のスポーツ現場を中心として,そこに関わる多様な公的・私的組織のネットワークをボトムアップ的に構築することが必要である。 以上のことから,地域で生活する障害者のスポーツ活動の場としての総合型に求められるのは,第一に,地域に根ざした関係性が組織の基盤となっていること,第二に,障害者に対して生活主体としてのスポーツ実践力を養成する教育的機能を備えていることである.
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