研究概要 |
本研究では,足底筋を除神経し,さらに協働筋である腓腹筋とヒラメ筋を切除するというモデルを利用して,足底筋に対し受動的ストレッチングを生じさせ,その時のIGF-I Ea, MGF/IGF-I Eb,およびmyostatinの発現状態を調べることで,骨格筋に対する局所的な成長因子の筋量調節機構の一端について明らかにしようと考えた。実験動物として8週齢のWistar系雄性ラットを用い,1)偽手術のみを施したコントロールグループ(NNCN群)2)協働筋である腓腹筋とヒラメ筋を切除したグループ(NNOL群)3)除神経のみを施したグループ(NDCN群)4)除神経を施し,協働筋である腓腹筋とヒラメ筋を切除したグループ(NDOL群)5)下垂体摘出のみを施したグループ(XNCN群)6)下垂体を摘出し,協働筋である腓腹筋とヒラメ筋を切除したグループ(XNOL群)7)下垂体を摘出し,さらに除神経を施したグループ(XDCN群)8)下垂体摘出および除神経を施し,さらに協働筋である腓腹筋とヒラメ筋を切除したグループ(XDOL群)の計8つのグループを作成した。本年度は,グルーピング3日後,3週間後に血清および足底筋を採取した。足底筋については,筋重量の測定,およびRNA抽出を行った。RNA抽出は,Trizol試薬を用いて行い,その後ゲノムDNAを除去するためにDNase処理を実施した。得られたRNAサンプルからReverse transcriptase反応を行い,1st cDNAを作成した。処置21日後において,NNOL群およびNDOL群の足底筋の筋重量はそれぞれNNCN群およびNDCN群に対し有意に高い値を示した。一方,下垂体を摘出したラットでは,XNOL群の筋重量はXNCN群に対し有意に高い値を示したが,XDOL群とXDCN群の筋重量に有意な差はみられなかった。体重当たりの筋重量では,NNOL群,NDOL群,XNOL群およびXDOL群のいずれにおいてもそれぞれNNCN群,NDCN群,XNCN群およびXDCN群に対し有意に高い値を示した。このように除神経+協働筋切除という受動的ストレッチングモデルにおいて,受動的ストレッチングが筋肥大を生じさせることが確認された。
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