脳卒中易発症性自然発症高血圧ラット(SHRSP)は遺伝的に高血圧・脳卒中になるだけでなく、種々のカルシウム代謝異常を伴っており、骨量が少ない、石灰化速度が遅いなどの明確な骨粗鬆症の特徴を示す。また、カルシウム排泄量が多い、血清副甲状腺ホルモンが高いなどの全身性のカルシウム代謝異常もあり、高血圧などの発症にもかかわっていると考えられている。このラットに骨を鍛えるジャンプトレーニングを行なわせると、下肢の骨量が増加するだけでなく全身のカルシウム代謝の改善が期待されると考えられる。さらにカルシウム代謝の改善によって動脈硬化が抑制され、寿命が延びる可能性が考えられる。また、この場合に骨から出される骨代謝関連のサイトカインが関連している可能性が指摘される。そこで第一実験として、雄のSHRSPをトレーニング群(n=10)およびコントロール群(n=9)に分け、トレーニング群には17〜25週齢時にジャンプトレーニングを行ない寿命の相違をみた。ジャンプトレーニングは4方を40cmの高さの板で囲んだ箱の底から、電気刺激を与えることにより条件づけをして、板の上端に上肢で捕まるまでのジャンプさせる方法で、1日20回、週5回、8週間とした。この結果、トレーニング群の方が長命である可能性(P=0.065)が指摘された。また第二実験として、SHRSPのコントロールラットであるWKYを用いて、同じく17〜25週齢時にジャンプトレーニングを行なわせ、25週齢時に血液をサンプリングして、ELISA法にて骨関連のサイトカインについて測定を行なった。その結果、オステオカルシンはトレーニング群で高かったが、オステオプロテゲリン、マトリックスGlaタンパクには両群に差がなかった。また、sRANKLは検出できなかった。ここまでの結果からは、動脈硬化を改善するようなサイトカインの変化は見られなかった。
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