本研究の目的は、発達期に感覚運動刺激を受けることが少なかった重度成人障害者に対して定期的なムーブメント教育を提供し、運動・感覚・コミュニケーション領域における効果を明らかにすること。発達年齢を考慮しつつも生活年齢にふさわしいムーブメントプログラム(運動の中味)を開発すること、地域において、卒後の重度の成人障害者に対する運動、レクリエーションプログラム効果的な提供のあり方(=重度障害者に対する運動スポーツの普及方法)を明確にし、養護学校等の卒後対策として提案をすることである。 今年度は昨年度に引き続き、成人重度障害者に対して、個々人に応じたムーブメントプログラムを月に1回程度提供した。これらの運動プログラムの様子を個人ファイル、ビデオ、デジタルカメラ等により記録した。具体的には、1回のプログラム提供終了時に施設職員、あるいは家族等とその日の活動についての総括、を行い、改善点、対象者の様子について記録をとった。また、12ヶ月に一度(平成18年度1回)、MEPA-Hによるアセスメントを行った。同時に施設職員に対して対象者の変化に関するインタビューを実施した。プログラム提供の中で、新しく試みられた運動や感覚の刺激方法を記述とビデオにより記録した。さらに、ダンスムーブメント教育専門指導者より専門的な知識の提供を受けた。 これらの結果、重度成人障害者であってもわずかながら発達上の変化が見られること。新たなムーブメントプログラムを実施するに際しては通常よりもかなりの時間をかけてその内容に慣れてもらわなければならないことなどが明らかになった。 次年度以降ではこうしたプログラム内容及び効果について整理しまとめること、卒後のレクリエーションプログラムの効果的な提供方法について考察してゆく予定である。
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