本研究では3つの目的が設定され、研究初年度に当たる平成17年度ではそれぞれに対応する4つの研究が遂行された。研究目的(1)「大学運動選手におけるソーシャルサポートの構成要素と機能の検討」に対応する第1部では、「平成17年度入学の新入生に対する縦断的面接調査」が実施された。そこでは、ソーシャルサポートにはストレスの脅威を緩和する情緒的な機能と、適応的な対処行動を促進する道具的なサポートのあることが確認され、特に「ストレス抵抗型」に判定される大学新入部員に対しては、後者の有効性が示された。研究目的(2)「ストレス対処資源としてのソーシャルサポートの有効性の検討」に対応する第2部では「大学4回生に対する回顧的面接調査」と「ストレス過程とソーシャルサポートの関連に関する質問紙調査」が実施された。前者では大学4年間の競技生活において、転機となる出来事をソーシャルサポートネットワークとの関連から分析した。その結果、ストレス過程とソーシャルサポートの間に、ライフスキルの介在する可能性を指摘した。後者の研究では精神健康度のうちQOL(生活の質感)はストレッサーの体験度に関係なく、もっぱらソーシャルサポート満足度と関連することが分かった。研究目的(3)「ソーシャルサポートの活性化を促す教育プログラムの開発と効果の検討」に対応する第3部では、「大学体育実技における構成的グループ・エンカウンターの実践研究」が実施され、その効果が検討された。その結果、本教育プログラムは新入生の大学生活に対する適応感を高めることが分かった。体育嫌いと疑われた新入生の事例研究では、本プログラムが教師との効果的なコミュニケーションを生み出していることが明らかとなり、体育授業を通じた適応支援が可能となると示唆された。 以上の成果はカウンセリング学会はじめ、体育学会、スポーツ心理学会、スポーツ教育学会等にて発表された。
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