本研究では3つの目的を設定し、研究2年目に当たる平成18年度ではそれぞれに対応する以下の研究を遂行した。まず研究目的(1)「大学運動選手におけるソーシャルサポートの構成要素と機能の検討」のため、平成17年度新入生9名に対する縦断的な面接調査の結果を、ストレスモデルを用いて分析した。その結果、環境移行に伴うストレス事象や問題への取り組み過程において、それぞれにユニークな転機のあること、そして転機を生み出す環境要因としてソーシャルサポートが作用することを認めた。精神健康度パタンの変化より、ソーシャルサポートはストレス度の低減のみならずQOLの向上にも寄与する可能性が認められ、この成果を日本カウンセリング学会にて発表した。研究目的(2)「ストレス対処資源としてのソーシャルサポートの有効性の検討」のため、17年度に引き続き「大学4回生に対する回顧的面接調査」を行った。その結果、ソーシャルサポートは精神的健康や心理的安寧の維持のみならず、選手の競技力向上にも役立つ可能性が示され、この成果を日本心理学会にて発表した。また、ソーシャルサポートの活用が競技力向上に結びついたスポーツカウンセリングの実践事例については、メンタルトレーニングフォーラムならびに日本体育学会において発表した。さらに研究目的(3)「ソーシャルサポートの活性化を促す教育プログラムの開発と効果の検討」に対応する第3部では、「試合期にあるスポーツチームに対するチームビルディングプログラム」ならびに「新入生サポートのためのプログラム」が開発された。いずれも構成的グループ・エンカウンターの要素を取り入れたセッション展開により、ソーシャルサポートの有効活用につながると期待された。
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