本研究では3つの目的を設定し、研究3年目に当たる平成19年度ではそれぞれに対応する以下の研究を遂行した。まず研究目的(1)「大学運動選手におけるソーシャルサポートの構成要素と機能の検討」のために、スポーツカウンセリングルームで受理した相談事例の分析を行った。その結果、問題解決過程においては当初対人ストレス源となった他者関係がサポーティブに機能することを認め、2007 World Mental Health Congressおよび日本臨床心理身体運動学会において発表した。また、相談事例の主訴と相談内容およびソーシャルサポートの関係に関する数量的検討については、日本体育学会において発表した。研究目的(2)「ストレス対処資源としてのソーシャルサポートの有効性の検討」のため、17-18年度に引き続き「大学4回生に対する回顧的面接調査」を行った。その結果、ソーシャルサポートを有効に活用するためには、受け手のサポート獲得に向けた動機づけを高める必要性が示唆され、この成果をスポーツ心理学会にて発表した。さらに研究目的(3)「ソーシャルサポートの活性化を促す教育プログラムの開発と効果の検討」については、インカレ優勝を目指す2つの大学チームに対して競技力向上のためのチームビルディング・プログラムを実践したところ、ソーシャルサポートの活性化に伴いチームワークが向上し、それぞれ優勝・準優勝といった高いパフォーマンスが得られた。このプログラムに参加したアスリートの心理的変化ならびに内省報告を手がかりにそのプロセスを検討し、日本心理学会およびメンタルトレーニングフォーラムにおいて発表した。また新入部員に対する適応支援のためのプログラムでは、ソーシャルサポートの活用により心理的ストレスの軽減ならびにQOLの維持が認められ、その結果を日本カウンセリング学会において発表した。
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