本研究では3つの研究目的を設定し、最終年度にあたる平成20年度には、それぞれに対応する以下の研究を遂行し、全体のまとめを行った。まず研究目的(1)「大学運動選手におけるソーシャルサポートの構成要素と機能の検討」のために、文献研究を通じてソーシャルサポートの概念モデルを構築した。因子分析より、アスリートを支えるソーシャルサポートの構成要素として、理解激励、尊重評価、直接援助、情報提供、娯楽共有の5因子を認めた。さらに大学4回生に進級した平成17年度大学新入部員に対してインタビュー調査を実施し、これらのサポートが彼らの主体的な問題解決を促進することを確認し、特徴的な事例については、The 5th World Congress of Psychotherapy、体育学会、日本スポーツ心理学会にて発表した。研究目的(2)「ストレス対処資源としてのソーシャルサポートの有効性の検討」のため、ソーシャルサポート活用に関わる個人要因として性格特性や対処行動の特徴を数量的に検討し、この成果をカウンセリング学会にて発表した。さらに研究目的(3)「ソーシャルサポートの活性化を促す教育プログラムの開発と効果の検討」については、平成18年度に開発した大学新入部員の適応支援を目指す教育プログラムを精錬し、チームワークの向上、試合での実力発揮に役立つメンタルトレーニング技法をエクササイズに組み込んだプログラムを作成した。縦断的検討の結果、本プログラムにより、ソーシャルサポート得点が向上し、ストレス緩和だけでなくQOLの向上も認めた。さらに試合期にあるチームに対してソーシャルサポートを有効活用するためのチームビルディング・プログラムを提供したところ、心理的競技能力の向上ならびに実力発揮度の向上を認めた。この成果を中国で行われたPre-Olympic Congressにおいて発表した。
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