研究課題
過去2年間の検討結果から、液晶プロジェクタ、映像提示装置、ミキサースピーカからなる提示システム(前後正面で見る方式)に床面レベルで見る提示システムを付加したシステムを構築した。本システムの効果を検討するため、聾学校の協力を得て、当該校が従来から行なっている方法(音及び太鼓や教師の指による表示による方法)と本システムを用いた方法の比較実験を、小学部(7名)、中学部(9名)、高等部(13名)の児童・生徒の参加を得て実施した。なお、実験は常に音楽を付けて実施し、下記4項目について4段階による評価を行なった。1)ドレミファソラシドの音がわかったか。2)太鼓の音や先生の指の動きを見て、ドレミファソラシドの速さや、途中で速さが変わったことがわかったか。3)床のライトや前の絵を見て、ドレミファソラシドの速さがわかったか。4)床のライトや前の絵を見て、途中で速さが変わったことがわかったか。その結果は以下の通りである。1. 小学部の平均値は1)3.1、2)3.3、3)3.4、4)3.1であり、音の速さの理解及び速度のアップの理解については2つの方法で明確な違いは見られなかった。2. 中学部では、同じく、2.2、3.6、3.4、3.7であり、1)と3)の間に大きな差があることから、音の速さが視覚的に明確に捉えられたことがわかったが、速度のアップの理解については差がなかった。3. 高等部では、同じく、2.1、2.6、3.6、3.5であり、1)と3)及び2)と4)の間に大きな差があることから、音の速さが視覚的に明確に捉えられ、なおかつ、速度のアップについても理解されたことがわかった。小学部の児童の成績に差がないことは、装置への慣れによって克服できると考えられるため、この装置が聴覚障害児童・生徒のシャトルラン測定に十分役立つと考えられる。