研究概要 |
社会的アイデンディティとは、「ある個人の感情および価値的な意味づけを伴う自分がある集団に所属している知識」であると定義される(Tajfel, H.,1972).これに従えば、スポーツ集団に所属する成員は、スポーツに特有の知識を共有しているはずである.スポーツ集団の好ましさは、自己の所属する集団(内集団)が他集団(外集団)に比べて優位にあることを確認する(内集団をひいきし、外集団を蔑視する)ことで達成されるという. 初年度の平成17年度は、以下の二つの内容を検討した.(1)現在の大学スポーツ集団の様式の収集分類調査、(2)体育系大学生の高校と大学の運動部集団についての感情を調査した.運動部集団は厳しい練習環境を強制する場合がしばしばあり、自分の集団をひいきするだけでなく、アンビバレントな感情も生じやすいと考えられる. (1)の様式では、体育会、同好会、さらに学校単位を離れた多様なスポーツ集団が存在していることが明らかとなった.二つの大学のみを今回は対象としたが、次年度ではさらに対象を広げて、多様なスポーツ集団の様相を明らかにする予定である. (2)の集団へ感情では、334名の体育系大学女子学生に3つの感情を問う質問紙調査を行った.そのうち高校と大学での部活動の雰囲気の違いでは、高校では、まじめ因子、正義感因子、無責任度因子の3つが抽出され、大学では、面倒見の良さ因子、やさしさ因子、正義感因子が見出された.高校では活動に参加するかが重要な要因で、大学になると人間関係への関心が強くなることが示された.仮説を明確にしてさらに分析を進める予定である. 文献 Tajfel, H.(1972)‘Social categorization', English manuscript of ‘La categorization sociale', in S.Moscovici(ed.) Introduction a la psychologie sociale, vol.1, Paris : Larousse.
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