研究概要 |
平成18年度は、第3期(1990年代〜現在)におけるブラジル・サッカー像についての考察を進めた。資料となる主要な諸言説が、体育・スポーツ史分野のブラジル国内学会Congresso Nacional de Historia do Esporte, Lazer, Educacao Fisica e Dancaにおいて順次報告されてきた経緯に注目し、同学会の第1回大会(1993年)〜第9回大会(2004年)の報告書掲載論文のレビューを行った。この作業によって、近年、W杯ブラジル代表チームに注目しているアントニオ・ソアレス(Antonio Soares)ら特に重要な気鋭の研究者の存在が明らかになった。彼らについては関連論文も精査しながら、サッカー史叙述に作用した社会背景とサッカー界の動勢、言説を規定した思想的立場や研究手法を詳細に検討することにより、ブラジル・サッカー像の今日的状況とその形成過程を考察した。平成18(2006年)5月〜6月には上記学会の第10回記念大会の視察に赴き、現地研究者との意見交換を通じて研究動向についての理解を深めた。結果として、第3期に特徴的に見られるブラジル・サッカー史叙述(世界の中にブラジル・サッカーを位置付けるグローバルな見方)と対応したブラジル・サッカー像の形成過程が明らかになった。なお、本年度に得られた研究成果の一部を「ブラジル体育・スポーツ史学会第10回大会視察報告-ブラジル・サッカー史研究の動向に注目して-」(日本体育学会高知支部第81回定例研究集会、2006年10月、高知)として口頭発表した。
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