研究概要 |
アートボディコミュニーケーションは美術領域における「人体測定」といり等身大の自分を見つめるタイプの作品制作をベースにして開発したものである。アートボディコミュニケーションは,単に他者とのコミュニケーションを手助けするのではなく,自己とのコミュニケーションスキルを充実させる手段として非常に有効である。したがって,セルフエスティームの向上やボディイメージの確立,またその調整において非常に有効に働くことが期待されている。一方,理想的なプロポーションは若い女性にとって大きな関心事であり,マスメディアにより「やせていること」を推奨する風潮が強調され,ダイエットに関する情報の氾濫や不適切な食生活、行動が増加している。また時に,その理想的なプロポーションと自己のギャップ,さらには客観的ボディイメージと主観的ボディイメージとのギャップから摂食行動に異常をきたす例が増加している。このためアートボディコミュニケーションが摂食障害にどのように働くかについて解析を進めている。 すでに短期間の作業におけるアートボディコミュニケーションのストレス緩和作用が心理的検査及び生理学的検査により示されている。今回5ヶ月に及ぶ長期の制作過程におけるEDIスコアーの変化について健康な男性5名,女性10名,計15名(19.3±1.3才)を対象に計測した。この結果,EDI総合点は半数の事例で減少傾向を示した。また,やせ願望、過食、体型不満、無力感、完全主義、対人不信、内部洞察、成熟恐怖の6つの下位尺度それぞれについても半数近くの例で減少が認められたが,その値は一定しなかった。今回の検証では,長期間にわたる追跡調査では個人間での差が大きく出ることが示唆された。今後,これまでの結果を活かし学校おける展開について研究を進める。
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