本研究では高齢者の反応時間遅延を改善するためのトレーニング法を開発するため、選択反応時間動作を速くするトレーニングマシンを開発するとともにその効果を検証することを目的としている。2年間の研究期間のうち、初年度は主にトレーニングマシンの設計と製作を行った。また、2年目は開発したトレーニングマシンを使用して、成人男女を被験者として選択反応時間短縮を目指したトレーニング実験およびその効果の残存性について検討した。 最初に開発したトレーニングマシンについては以下のとおりである。すなわち、(1)光刺激に対する選択反応動作を要求するマシンである、(2)光刺激は交通信号機と同色である赤、青、黄の3色とした、(3)操作盤全体に構造および機能の面で同一な6つの操作面ユニットを配置した、(4)操作面ユニットは1つのランプと左右2つの消灯スイッチが配置されている、(5)ランプは3色のうちの1色がランダムに選択されて発光する、(6)トレーニングする者が両手に保持するパッドは消灯スイッチを押す際に使用するもので、左右それぞれのスイッチと対応している、(7)そのランプの色に応じて、赤は左のスイッチ、青は右のスイッチ、黄は左右同時のスイッチを対応するパッドで押すと消灯する、(8)対応しないパッドでスイッチを押しても消灯しない、(9)トレーニングマシンが提供するモードは年齢を考慮し4種類とした。 成人を被験者とした選択反応時間短縮およびその残存性について検討した結果は以下のようにまとめることができる。(1)男女ともトレーニング開始後4日日を境にして急激に反応時間が短縮する、(2)トレーニング開始後同一被験者内でのばらつきが狭まり反応時間も一定する、(3)さらに継続すると、同一被験者内でのばらつきが広がり、反応時間も再度短縮する、(4)トレーニング終了してから2ヶ月後においてもいったん短縮した反応時間はもとに戻ることなく、トレーニング効果の残存性が存在することがわかった。 以上のことから、成人においては新たな脳内運動プログラムの創出を示唆するものであり、当然高齢者においても本研究で開発したトレーニングマシンは反応時間の遅延改善に有効であると考えられる。
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