2007年度は、2006年度に引き続き、(1)第二次大戦前及び大戦後の保健室と養護教諭の実践の実態をとらえるための史料収集と(2)インタビュー調査を行うとともに、得られた資料及びデータの整理・分析を行い、合わせて、(3)養護教諭の実践の構造をとらえるための理論構築を試みた。 (1)の資料収集と分析では、戦前・戦中昭和期の健康教育運動の中で保健室(当時は衛生室等)がどのような機能を有していたかを実証する史料を収集・整理し、保健室や設備といったハードについては、各学校に保存されていた備品台帳や学校衛生に関する冊子等、これまで収集した史料から「もの」の流れを整理した。また、養護教諭の実践については昭和初期に発行された雑誌「養護」を中心に分析し、当時の学校看護婦像の一端を明らかにした。 なお、これらの研究成果の一部は、2007年6月にバンクーバーで開かれた第19回健康教育世界会議で、「日本の保健室の歴史」と題して発表した。 (2)のインタビュー調査については、昨年度実施した元養護教諭対象のインタビュー調査のマニュスクリプトをもとに、第二次大戦後(初期)の養護教諭の実践の様相をとらえた(舞鶴市の9名のインタビュー結果は整理を終え、広島市の2名分を現在整理中)。加えて、広島市の元養護教諭3名に新たにインタビューを行い、現在そのマニュスクリプトを作成中であるが、戦後初期の具体的な実践の様子が明らかになりつつある。なお、これらの元養護教諭の中から、記憶が明瞭な方を対象にさらに詳細なライフストーリー・インタビューを始めている。 (3)については、養護教諭の実践の構造をどうとらえるかについての理論的なまとめの作業を行い、その成果を近く(2008年6月)に刊行予定の拙著の一部として納めた。 以上の作業を通して、戦前・戦後の学校看護婦・養護教諭の実践像が新たに浮き彫りになりつつある。
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