高血圧や肥満、糖尿病といった生活習慣病の発症には、食生活、運動などの生活習慣が重要である。しかし、同じように食生活等の改善を行ってもその効果は個体によって異なる場合が多い。生活習慣病の発症や重症化、食生活改善効果の個体差を引き起こす原因のひとつに個体が持つ遺伝要因の違いが考えられる。本研究は、生活習慣病の発症や重症化、さらに食生活改善効果の個体差に関与する遺伝子を同定すること、また食生活と遺伝要因の相互作用が生活習慣病の発症に与える影響を明らかにすることを目的として進めている。 平成17年度は、健康診断を受けた265名を対象に、エネルギー代謝やインスリン抵抗性に関与する6種類の遺伝子(アディポネクチン、アドレナリンβ2受容体、アドレナリンβ3受容体、PPARγ、UCP2、レプチン受容体)と活性酸素の生成や消去に関わる6種類の遺伝子(カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(M3、M5、T)、ペルオキシレドキシン)内に存在する遺伝子多型と肥満、糖尿病、高血圧との関連について調べた。被験者の食習慣は自記式食事歴質問表を用いて分析した。その結果、レプチン受容体遺伝子Gln223Arg多型およびグルタチオンペルオキシダーゼ遺伝子Leu2Pro多型と肥満の間、カタラーゼ遺伝子3'UTRのC/T多型と高血圧との間に関連がみられた。また、アディポネクチン遺伝子G45T多型は、被験者全体でみた場合には肥満との間に関連はみられなかったが、対象を脂質を過剰に摂取しているに限ると、TT型の人ではTG型、GG型の人に較べて肥満を発症しやすい傾向がみられた。以上の結果より、レプチン受容体遺伝子およびグルタチオンペルオキシダーゼ遺伝子の個体差が肥満、カタラーゼ遺伝子の個体差が高血圧の感受性に関与する可能性が示唆された。さらに、脂質の過剰摂取などの食生活と遺伝子型の組み合わせは肥満の発症に重要であることがわかった。
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